年頭所感
伝統企業が考える情報化社会への対応
小西酒造株式会社
15代 小西新右衛門
あけましておめでとうございます。
コロナ禍も落ち着き始めた中ではありますが、ここ数年の社会環境の変化の大きさは驚くべきことであります。時代を超えての価値観の変化に対して、来年創業475周年を迎える白雪・小西酒造としてどのように考えていかねばならないかを自問自答し続けております。
最近の出来事で私自身がわくわく感をもって臨んでいることがございます。
それは「古文書アプリ」の活用であります。古文書アプリとはカメラのOCR技術を活用して古文書を現代の言葉に置き換えるアプリのことを指します。弊社には江戸時代の文書があり、その中にすべての時代のお酒の造り方が書き残されております。その文字を読み解くだけでも大きな労力を要しておりましたが、このアプリを活用すると過去の文書を読み解くだけに留まらず、その内容と時代背景の中で現在・未来にも通用することが多く含まれているのではないかと期待しております。時代を超えて不変のことが見えてくるとそれは人間が生きていく上で本質的なことになると確信いたしております。新しい技術や考え方が、過去の情報を活かして将来に役立つものを新たに生んでいくためにも大きな役割を担う可能性を感じております。
今年は日本酒業界にとってエポックの年になる可能性があります。それは日本酒や本格焼酎等におけるこうじ菌を活かした「伝統的な酒造り」が、ユネスコの無形文化遺産に登録される可能性があるからです。昨年「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されて10年を迎えました。この間、「和食」が世界に広がったスピードには目を見張るものがあります。「日本酒」はまだまだ世界ではマイナーな飲み物であります。「日本酒」は、「吟醸酒」のように香りを重視したもの、また「燗酒」のような世界で類を見ない「温めて飲むと美味しいお酒」や日本酒の原点でもある「にごり酒」、「新酒」ばかりではなく、年数を経て美味しく変化していく「古酒・熟成酒」等々本当に多様な味わいが楽しめます。このことを世界の方々にもっと知っていただくきっかけになるのが、ユネスコの無形文化遺産への登録であると考えます。「日本酒」がワイン、ビール、ウイスキーと同じように世界の共通語になることを心から願っています。
最後になりましたが、2024年が皆様にとって素晴らしい年になることを心から祈念し年頭のご挨拶といたします。